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今後25年の美容成分を形作るトレンド

タマネギの皮細胞の顕微鏡によるクローズアップ

Crodaの創業100周年を記念し、当社の研究開発および戦略部門の責任者らから、化学原料サプライヤー業界において今後25年間の美容用原料に影響を与えると予測される主要トレンドについての見解を集めました。

これらの知見は、レポート「革新的原料の未来を切り拓く:これからの25年間を形作るトレンド」にまとめており、そのハイライトを以下にご紹介します。

 
 
画像の左側には植物細胞の顕微鏡によるクローズアップが写っている。右側には赤毛とそばかすのある若い白人女性の顔がカメラをまっすぐ見つめている。

サステナビリティ

2024年世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書」は、化学原料サプライヤー業界にとっての主要な4つのリスクとして次の項目を挙げています。

  • 天然資源の枯渇
  • 生物多様性の喪失
  • 地球システムの重大な変化
  • 気候変動による極端な異常気象

コンシューマーケア事業における今後25年

クローダ コンシューマーケア部門 研究開発担当 副社長 アンディ・バターワースが、美容業界における革新的な原料のこれからの25年間について語っています。これら4つのリスクはすべて環境ストレスに関係しており、当業界における環境サステナビリティの重要性を示しています。

美容業界におけるサステナビリティの主要な検討事項は以下の通りです。

資源への影響 

原料のアンサステナブル(持続不可能)な採取方法は、資源不足、生息地の喪失、生物多様性の低下を招きます。したがって、企業が「ネイチャーポジティブ(自然再興)」へと移行し、種、生態系、自然のプロセスを積極的に保全し、再生すことが不可欠です。出典: What is Nature Positive? / ネイチャーポジティブ | Croda

原油由来の化学原料から、バイオベース、リサイクル材、廃棄物由来材料への移行も加速すると予想されており、今後25年間でスペシャリティ原料産業における原油由来化学原料の使用割合は大幅に減少すると見込まれています。しかし、人口が増加し、食品用バイオマスと原料用バイオマスとの競争が激化するにつれて、食品と競合しているとみなされるバイオベース材料は、より厳しい注目を浴びることになるでしょう。炭素は私たちの業界の基盤であり、課題は、原油由来化学原料や主要作物由来バイオマスの代替えとなる、真に持続可能な炭素源を見つけることが今後の課題となります。現在検討されている新たな炭素源としては、廃ガス回収技術や植物由来リグニンなどが原料として検討されています。

ネットゼロに向けて

Landscape of fields at sunset with visible wind turbines.

2010年代後半から2020年代初頭にかけて各国政府が合意した「2030年の脱炭素ネットゼロ目標」は、多くの国で達成が困難であると見込まれています。その結果、各国政府はその責力を企業に転嫁し、企業が率先して解決策を提示することが求められる見通しです。これは、すでに自動車業界で進んでいる電動化・ハイブリッド化や、英国におけるプラスチック製包装材への課税のように、業界ごとの目標設定や規制、さらには環境負荷の高い製品への課税措置という形で進むと考えられます。

2050年までに、こうした措置は消費財の包装から、その製品を構成する原材料へと移行していくことが想定されます。この分野の法規制はさらに複雑化することが予想され、特殊原料メーカーはコンプライアンスの確保と競争力維持のために、これまで以上の対応が求められるでしょう。とはいえ、すでにサステナビリティを戦略の中心に据えている企業にとっては、これは大きなビジネスチャンスにもなり得ます。製品の純度、性能、由来をサステナブルな方法で向上させようと取り組む企業や、製品の環境影響をライフサイクル全体(”cadle to grave(完全に循環する形で)”)で実証できる専門性を持つ企業は、この不安定な環境下においても有利に立つことができるでしょう。

 

こうした背景から、私たちの業界ではライフサイクルアセスメント(LCA)を標準的な意思決定ツールとして採用することを慎重に検討しています。これは大きな変化です。従来のサステナビリティに関する指標とは異なり、LCAは製品の「原料採取から廃棄まで (cradle to grave)」の環境影響を評価し、開発から調達、廃棄に至るまでのあらゆるプロセスをより詳細に分析します。その結果、サステナビリティに関する要求は単に排出量削減に留まらず、サプライチェーン全体を包括的に評価するものとなります。

 

クローダビューティーは、気候変動、土地利用、水利用、ヒトでの毒性、富栄養化を含む16の主要指標を評価する、“原料採取から廃棄まで”および“ゆりかごから墓場まで”の双方のLCAを幅広く実施してきました。こうした包括的なアプローチにより、各ブランドは潜在的な負荷のシフトを把握するための洞察を得ることができ、ビジネスニーズに最適に答えることが可能になります。

 

消費者の選択

すでに、かなりの割合の消費者が、責任ある行動をとり、気候変動への解決策を提供している企業から、より持続可能な製品を購入したいと考えていることがすでに確認されています。さらに、消費者はすでに、大気汚染の影響と闘うスキンケア製品のような、気候変動の影響に対応する製品を選んでいます。

この点については、特に当社の「気候適応美容」のトレンドページで詳しく論じています。

当社のサステナビリティに関するコミットメントと実績について、さらに詳しくご覧ください。

バイオテクノロジー  

バイオテクノロジーは、すでに従来の原料製造プロセスに変化をもたらしています。この動きは今後25年にわたり継続し、特に医薬品およびコンシューマーケア分野において、バイオテクノロジーによるソリューションへの注目が一層高まると予想されます。特に注目されているのが、植物細胞培養、発酵、マリンバイオテクノロジーの3分野です。

クローダ―ビューティーは、この分野で30年以上の経験を持ち、自社の化粧品有効成分の約3分の1がバイオテクノロジー由来であるように、このトレンドに対応する十分な体制が整っています。

植物細胞培養

Microscopic close-up of plant cells

植物細胞培養の世界的リーダーとして、私たちはこのアプローチが今後25年間の原料イノベーションにおいて重要な役割を果たすと認識しています。植物細胞培養は、生物多様性や自然生態系を保護しながら、特定の化合物を高純度で大量に生産することを可能にすることで、イノベーションを加速します。

植物細胞培養で製造されたクローダビューティの原料例としては、 Mel[o]stem™(メロステム)や Majestem®(マジェステム)などがあります。

発酵 

発酵は再生可能な生物由来資源を活用して特殊成分を製造する、持続可能性に優れたアプローチです。石油化学原料への依存を抑えるだけでなく、生物由来原料や廃棄物までも活用して、循環型経済の推進にも寄与します。

クローダビューティでの原料例としては、NatraFusion™ SL HA(ナトラフュージョンSL HA ) と KeraBio™ K31ケラバイオK31)があります。どちらも、標的とする微生物を用いて、従来はそれぞれ石油化学由来または動物由来から得ていた有効成分の原料を生成します。

マリンバイオテクノロジー

Microscopic close-up of marine plant cells

海洋生物の80%以上は未だ解明されておらず、複数の業界における製品開発を刷新し得る新規化合物の発見に、大きな期待が寄せられています。火山噴出孔のような極限環境に生息するような海洋微生物からは、アンチエイジングスキンケア製品から新しい抗生物質に至るまで、幅広い用途に対応するユニークな化合物を見出される可能性があります。

例として、Pseudoalteromonas(シュードアルテロモナス)株をバイオ発酵して得られる Luceane™(ルシアン)があります。

当社のバイオテクノロジーの取り組みについて、詳細はこちらをご覧ください。.

多様性

発展途上国の経済成長は既存の市場を上回っており、特にアジア、中東、アフリカは、拡大する中間層と都市化を背景に将来の成長源として大きな存在感を示しています。世界中のあらゆる文化圏でコンシューマーケア製品の浸透が進んでおり、原料サプライヤーは製品ポートフォリオを構築する際に文化的・民族的な違いを考慮する必要があります。

また、高齢化も消費の追い風となっています。世界保健機関(WHO)によると、60歳以上の人口は2015年のわずか12%から、2050年には22%に達すると予測されています。先進国における高齢者は、可処分所得が多く、責任が少ない傾向にあるため、贅沢品や衝動買いをすることが多くなります。さらに寿命が延びる中で、高齢者は健康を実感できたり、若々しく見せてくれる製品を好む傾向にあります。美しさは今や、あらゆる人生のステージにおいて、「ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)、自信、自尊心」と同義になりつつあり、世界的に増加する高齢者に対して、より良い製品価値を提供できるチャンスが広がっています。

デジタル/人間拡張

今後25年間で、バイオテクノロジー、AI、ロボティクス、ナノテクノロジーの進展により、テクノロジーによる人間拡張が大きく進展すると予測されています。

2050年までに、この人間拡張がもたらす最も大きなインパクトは、バイオメトリクス(生体認証)データの進化と、それに基づく「超パーソナライゼーション」の実現であると予想されます。
コンシューマーケア企業は、生体認証データを活用して、スキンケア製品は、リアルタイムで個々の肌のpH、水分量、UV曝露量に合わせた設計が可能となり、ヘアケア製品はバイオセンサーによる頭皮や毛髪の健康分析に基づいて処方されるようになるでしょう。

AIはこの領域を支援し、新素材の発見を加速させ、生産効率を向上させるでしょう。製造業はより俊敏であることが求められ、試作とテストを迅速化して、個別仕様の製品を生み出していく必要があります。その結果、原料メーカーはポートフォリオを見直し、テクノロジーによる拡張とシームレスに統合できる、さらに革新的な製品を創出していくことが求められます。